起立性調節障害(OD)について
●起立性調節障害の原因と症状は?
立ちくらみ、めまい、朝なかなか起きられない、動くと動悸がするなどの症状を呈する疾患として、起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)という病気があります。ODは特に思春期に多く、一般中学生の15~25%、一般高校生の15~30%にこの症状があると言われています。ODは身体発育のために自律神経の働きがアンバランスになった状態と説明されています。通常は起立時に循環調節機構が働きますが、この機構がうまく働かないことにより、立ちくらみやふらつき、失神発作、全身倦怠感などのさまざまな起立不耐症状がみられます。症状としては上記の他に、朝起きの不良と夜の過覚醒による睡眠リズムの乱れが約7割に認められます。また不登校を合併することが多いとされています。
●うつ病とのちがいは?
ODは心理的ストレスに非常に強い影響を受けやすいとされます。午前中に気分の落ち込みがみられる点は、しばしばうつと区別がつきにくいという問題があります。ODの場合、通常は夕方から夜にかけて元気を回復し機嫌よくテレビやゲームに興ずるという点が、うつ病との区別に有用なことがあります。
●大人になっても継続することも?
ODは思春期特有の病気とも言われていますが、一方ODの長期予後に関する論文では、成人後も症状が持続している(キャリーオーバー)患者さんが30%前後と高率でいるという報告もあります。ODは通常小児科医にとっては比較的馴染みのある疾患ではありますが、成人科においては見逃されることがあるという懸念があります。成人においてうつ病として診断されてしまい、不用に難治化するケースもあるため、十分注意が必要です。
●起立性調節障害(OD)の治療は?
ODの治療としてまず重要なことは、ODという身体の機能的疾患であることを正しく理解することです。ODの患者さんは心理的に過剰適応傾向があり、自己を抑圧して周囲の期待に応えようとするので、心理的ストレスを溜めやすいという特性があります。ODの症状は、身近な家族などから見ると「怠けている」とか「サボっている」と誤解されることが多く、このことがかえって患者さんを必要以上に苦しめている場合があります。本人だけでなくその周囲(家族、就学児であれば学校の先生など)も、ODについて理解を深めることが効果的です。
非薬物療法としてはそのほかに、規則正しい生活習慣により睡眠パターンを改善するよう指導します。また水分摂取を推奨します(1.5~2L/日)。
薬物療法としては、循環動態維持のため昇圧剤、生活サイクルの是正のために睡眠薬、身体症状に対して漢方薬などを、併用することが一般的です。
参考文献:[藤井由里:起立性調節障害, 治療Vol.93 No.10, 南山堂, p2121-2125, 2011]
医師 本間洋州
<追記> 起立性調節障害(OD)の「見逃されやすい原因」について
見逃されやすい原因として、
1)炭水化物や甘いお菓子、清涼飲料水などの過量摂取は、タンパク質不足、ミネラルやVitB群の摂取不足や消耗につながり、知らない間に疲労しやすい体質になってしまいます。
2)糖質の過剰摂取は、低血糖症をまねく原因になり、自律神経失調症状をおこして、疲労しやすさや情緒不安定などを起こします。
3)食事の偏りから、腸内フローラの乱れが起き、悪性菌が増殖することで慢性腸炎になり腸での消化吸収が悪くなり、腸漏れ症候群や食物アレルギーを伴い、慢性疲労や情緒不安がおきていることもあります。
4)慢性腸炎が生じると、体内での炎症が持続し、副腎疲労状態が起きて慢性疲労でベットからなかなか起き上がれない状態になります。
これらのことは、通常の検査では判断できない事が多いため、見落とされやすいです。
しかし、これらが原因とわかれば、治療により回復も早いので、他にはっきりした原因がわからない場合は疑ってみることをお勧めします。
院長 佐久間一穂
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