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診断・治療が難しい非定型的精神症状の患者さんが増えている!!

                      

                     

 

 

 

 

 うつ病? 不安障害? 発達障害? 軽症の統合失調症?

このところ不安障害か、うつ病か、発達障害か、軽症の統合失調なのか判断が難しい患者さんが増えているようです。長期間にわたり、うつ病、躁うつ病、パニック障害、発達障害などの診断で治療しているものの改善増悪の繰り返し、または、一向に改善しない下記のような非定型的な症状がある患者さんが受診することが増えています。

 

●非定型的精神症状について

まずは主な症状を5つ記載します。

1)自生体験

自生体験は、勝手に考え(自生思考)や過去の場面が思い浮かんでくる(自生記憶想起)ものであり、ありありとした映像を空想したり(自生空想表象)、音楽が頭の中でかかったりする場合(自生音楽表象)もある。程度が軽いものは、健康な人でもみられることがあるが、こうした雑念が増え、肝心なことに対しては、ぼんやりして集中できないといった場合に、より注意を要する。

2)気づき亢進

注意を払っていない刺激に対してまで感覚が鋭敏になり、反応してしまう状態で、聴覚性の気づき亢進が多い。「耳が敏感になった」と感じられ、普段なら聞き流すことのできる周囲の雑音や物音、人の声に対して、注意がいってしまう。意図せずに聞き耳を立ててしまったり、はっと驚いたりという事が頻繁に起きる。

3)「まなざし」体験

何となく自分のことを見られているように感じる漠然とした注察観念で、さらに強まると、背後や窓の外に誰かがいてこちらを見ていると、実体をもった存在をありありと感じることもある。そうした場合は、「実感的意識性」という。しかし、この場合も、本当に誰かがいるわけではないとわかっている点が、幻覚妄想とは違っている。

4)緊迫困惑気分

神経が張り詰め、何かに追われているような切羽詰まった気分が続いた状態のこと。それがさらに嵩じると、すべてのものが迫ってきたり、襲いかかってくるように感じられたりすることもあり、「対他緊張」と呼ばれる。

5)即時的認知の障害

認知機能の障害で、即時的な理解、判断、記憶の能力が低下する。そのため、以前ならスムーズに頭に入ったことが理解できず、相手の話が聞き取れなかったり、聞き落としが増えたりする。些細な判断がつかず、頭の中で堂々めぐりが起こりやすい。また、ワーキングメモリーが低下するため、小さなミスが増えたり、自分が何をしようとしていたのか、わからなくなったりすることも起きやすい。

 

こちらの症状は、中安信夫先生が、著書「初期分裂病」(1990年初版)に記載した症状ですが、同様の症状の患者さんが受診することが増えているのです。

(※分裂病という病名は、現在は統合失調症と変更されています。)

本来、統合失調の症状には、明らかな幻覚や妄想や思考の混乱などがあり、本人に自覚がないことが多いのですが、上記の非定型的精神症状を訴える患者さんたちには、明らに統合失調症に認める症状がなく、本人が自覚して相談にくることが殆どです。

この本を約25年前に読んでから、時々同様の症状を訴える患者さんを診察することがあったのですが、5~6年前から、上記の症状の患者さんを診察する機会が増えているのです。これらの症状全てが当てはまるわけでなく、いくつかだけが当てはまるケースも少なくないです。

 

●非定型的精神症状のチェックリスト

中安先生の記述を参考にしながら、私が診察していて、訴えの多い思われる症状を順番にまとめたチェックリストです。子供の頃からこれらの症状が続いて、それが当たり前と思っており、治療者から症状について問いかけないと気づかない患者さんもいます。

1)自生思考・自動思考・連想思考

 過去のことが自然に頭の中に浮かんできて、憂うつな気分や、悲しくなる。

 先々の心配、計画、予測などを考え続けて止まらない、考えがまとまらない。

  ぼんやり考え事をしていて、時間があっという間に経過していることがある。

(仕事をしていて、2つ以上のことを同時にこなすのが苦手で、急に別の仕事を依頼さ 

 れたりすると混乱して、優先順位がつけられなくなる。)

2)被注察感

 (他者からの視線への過敏傾向、周囲の人からの見られている感じで緊張する)

3)他者に噂されている(悪く思われている)感覚、敏感さ(被害関係思考)

4)音の過敏性(聴覚過敏)

5)周囲の些細な動きに注意がそれて、自分の仕事などに集中できなくなる

6)暇な時間に落ち着かない、TVや本に集中できない

7)会話中に相手の話している内容がわからなくなる、会話中に上の空になる

8) 物忘れが多くメモをたくさんする

  ある事をしている途中で、別の用事や要件が浮かんで行動してしまい、先にしてい  

 た事を忘れてしまう

9)頭の中に音楽が流れる頻度が多い

(無意識に継続的に音楽が流れている感じ、自分でスイッチをon、0ffできる事もあ る)

10) 自分の行動を、他人ごとのように冷静に見ているように感じる

  自分と生きている社会との間にギャップを感じる

 (自分だけ、薄い膜やカプセルの中にいる感覚などがある)

11) 無意識に独り言を言うことが多い

 

●その他の特徴について

前述したように、統合失調症の患者さんとは異なり、病的な症状ではないかと本人が自覚している点があげられます。

これらの症状のために、不眠症が続いたり、仕事や人間関係で不安緊張が継続し疲れやすい、症状自体で精神的疲労が蓄積する、悲観的思考が持続するなどでうつ状態を合併していたり、不安緊張からパニック発作をきたすこともあります。

物忘れが多い、仕事のミスが続く、片付けが苦手などの症状が目立つことがあり、発達障害と診断されることもあります。

しかし、これまでの経験では、統合失調症に移行することは少ないようです。同様のことを中安先生も記載されています。

向精神薬、抗うつ薬、抗不安薬などの薬による治療をしても、一時的に改善することもありますが、効果が乏しいことが多いのも特徴です。

 

●非定型的精神症状をきたす原因は?

一つは、精神疾患の遺伝的要因やうつ病、発達障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などが原因の場合がありました。

それら以外の原因ですが、ストレス外来にて腸内環境不良の方や、遅延型食物アレルギー、有害重金属蓄積、低血糖症の方なども診察していますが、同様の症状を訴える方が少なからずおり、それらの治療により症状改善することも多いことがわかり、過剰ストレス、食生活の問題と腸内細菌の乱れ、有害重金属蓄積、有害化学物質の蓄積などが原因の場合があると考えています。

 

●治療について

統合失調症、うつ病などの精神疾患が原因の場合には、通常の治療薬にて奏功することがあります。しかし、上記の後者のようなことが原因である場合は、薬の効果は限定的であまりないことが殆どです。原因になっている根本原因を調べ、治療する必要があります。

 

まとめ

現代は昔に比べ、格段と検査や治療など医療技術が進歩し、健康診断などの予防対策なども進められているにも関わらず、ガンや免疫疾患、アレルギー、膠原病、認知症、発達障害、その他精神疾患などが増える一方の状況です。高度経済成長を達成した国々で同様のことが起きています。これらの難治な病気が増えるのと同時期から、食品や生活用品などに使われる有害化学物質の認可が数万にも増えている状況があります。身の回りの毒物の増え方と病気の数の増え方が相関しているように思えますがいかがでしょうか?

分裂病と診断しがたい症状の患者さん方に注目し、中安先生が「初期分裂病」を出版したのが1990年です。高度経済成長の歪みが、健康問題として顕在化してきた頃です。私には、非定型的精神症状の背景にも、同じ原因が潜んでいるように思えます。

 

参考文献:

*「初期分裂病」中安信夫(著)

*「重金属」体内汚染の真実 大森隆史 (著)

*うつ病・自閉症と腸内細菌叢

Depressive Disorder, Autistic Spectrum Disorder and Gut Microbiota

https://ci.nii.ac.jp/naid/130006321528

*有害化学物質による 健康障害

https://www.id.yamagata-u.ac.jp/EPC/kangodoc/091016yugaikagaku.pdf

*うつ病と食生活の関係

https://www.nyusankin.or.jp/wp/wp-content/uploads/2019/12/Nyusankin_486_b.pdf

 

院長 佐久間一穂 

 

 

 

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