ストレスと自律神経、副腎ホルモンの関係について!(その3)
●ストレッサー(ストレス原因)とその持続による状態とは?
カナダの生理学者セリエ(Selye,H.)は、ストレスの原因となるストレッサーを物理的ストレッサー、化学的ストレッサー、生物的ストレッサー、心理的ストレッサーの4つに分類し、持続的なストレッサーによって起こる身体的な非特異的な反応を汎適応症候群と名付けました。
この汎適応症候群では、持続的ストレスに対する心身の反応の経過として「警告反応期」、「抵抗期」、「疲憊期」という3段階があると指摘しました。
汎適応症候群の時間的経過(鈴木・濱,2001を一部改変)
①警告反応期:生体が突然有害なストレッサーにさらされて生じる反応で、この時期は さらにショック相と反ショック相に分けられます。ショック相は、ストレッサーに突然さらされた生体がショック状態を起こしている時期です。血圧低下や血糖値低下、筋緊張の抑制などの現象が見られ、大体数時間から1日程度持続します。続いて、反ショック相は、突然のショックから立ち直り、ストレスに対する適応反応が本格化し始める時期にあたります。そのため、血圧や血糖値の上昇といったショック相とは真逆の反応が起こります。
②抵抗期:有害なストレッサーに対する抵抗力が増し、ストレッサーと抵抗力とがバラ
ンスを保つことによって一旦は安定を迎える時期にあたります。この時期にストレッサーが弱まるか取り除くことができれば、ストレス状態から回復して健康を取り戻すことができます。しかしながら、抵抗期の間にストレッサーに抵抗するためのエネルギーを消費しすぎてしまうと、やがて限界を迎えます。
③疲憊(ひはい)期 長期間にわたって継続するストレスに生体が対抗しきれなくなり、段階的に抵抗力(ストレス耐性)が衰えてくる、いわばエネルギー切れの状態を示します。この時期は、「ショック相」と同様の生体機能の低下や不適応が見られます。さらに、有害なストレッサーが弱まらず、疲憊状態が長期にわたって続けば、最悪の場合は死に至ることもあります。
●「警告反応期」、「抵抗期」、「疲憊期」の自律神経、副腎ホルモンの状態と症状に
ついて
👉警告反応期:
ストレッサーが出現することによって、一時的に抵抗力が低下する段階
ショック相と反ショック相に分けられますが、大きなストレスでショックを受けた直後は、体温低下、血圧低下、血糖値の低下、筋緊張の弛緩などの症状が生じます。これらは、交感神経が急激に作動しなくなった状態です。
また、副腎の反応低下を伴った状態です。
反ショック相では、交感神経や副腎がストレッサーに対処し血圧や血糖値を改善します。
👉抵抗期:
その後、ストレッサーに対して身体が適応しようとして抵抗力が上がる段階。
ストレスに対して、抵抗力を増すために交感神経が亢進し副腎ホルモンの分泌が上昇し
ます。ストレスが大きく、過剰に抵抗力を高めるようになると交感神経や副腎ホルモンの過剰作用がおき、高血圧、高血糖、体脂肪の増加(肥満)などのメタボリックシンドロームのような症状をきたします。動悸、過呼吸、多汗、頭痛、耳鳴り、胃もたれ、便通異常、食欲亢進などの身体症状や焦燥、不安、イライラ感、怒り、衝動的、不眠などの精神症状が認められるようになります。
👉疲憊期:ストレッサーが長期間継続し、身体が限界に達して再び抵抗力が低下する段階。
この時期は、エネルギーが消耗している状態で、交感神経作用が弱まり副交感神経の方が優位な自律神経失調状態となります。また、副腎機能も疲弊しコルチゾールやアルドステロン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどの分泌が低下します。
抵抗期とは反対に、起立性低血圧、低血糖、体温低下、タンパク質や脂質の代謝も低下し、体内のミネラル不足や脱水傾向になります。細胞のエネルギー代謝も低下しているために、疲労が改善しにくく疲れやすく、全身倦怠感が持続、新陳代謝が悪いため毒素や酸化ストレスも高まっている状態が持続します。副腎ホルモンのコルチゾール(ステロイドホルモン)が減少し、体内での慢性炎症を抑制できなくなり、アレルギー疾患、自己免疫疾患、動脈硬化増悪による虚血性疾患、過敏性腸症候群、リーキーガット症候群、発癌のリスクなど、様々な身体的疾患が発症しやすくなります。また、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどのホルモン(神経伝達物質)が減少し、脳内の慢性炎症も伴い、うつ病や重篤な不安障害、認知機能(思考力や記憶力など)の低下などの症状も認めるようになります。
このように、抵抗期で回復に向かわず、疲弊期に進んでしまうと、重篤な自律神経失調症や副腎機能低下状態(副腎疲労症候群)になり、負のスパイラル(悪循環)で症状がどんどん悪化してしまいます。社会生活どころか、日常生活も自立できなくなってしまいます。
●ストレスを早めに改善し、蓄積しないためにはどうしたら良いでしょうか?
① 自分のストレスに気づきましょう!
ストレス対処の第一歩は自分のストレス、そしてストレスから起こるこころ及び体調の変化に気づくことです。特に「気分が沈む」、「何をするのにもやる気が出ない」などのこころの症状に加えて、「頭が重い」、「めまいがする」、「息苦しい」など原因不明の体調の変化に関する症状が続く場合には、ストレスから起こる症状である可能性があります。
② 生活習慣に気をつけましょう!
普段から身体活動量が多い人や定期的に運動を行っている人では、うつが起こりにことに加え、うつ症状を既に持っている人においても定期的な有酸素運動が症状改善に効果があることが報告されています。また。野菜、果物、魚、全粒粉を含む健康的な食事がうつ症状のリスクを減少させることが示されています。
③ 睡眠を十分にとりましょう!
睡眠の質・量を十分に確保することは、ストレス耐性を高めます。逆に、急に眠れなくなったり、朝に起きれなくなったりすることが、ストレスのサインである可能性があります。
④ ストレス解消しましょう!
趣味や運動等で気分転換すること、また友人とのおしゃべりなどでストレスを発散することはストレス対策として有用です。少しの時間でもストレスを忘れることがストレスの悪循環を予防します。
⑤ 誰かに相談しましょう!
家族や友人に相談することは、ストレスによる心身への影響を弱める働きがあります。 話を聞いてもらうだけでも心理的な安心感が得られたり、相談しているうちに、自分の頭の中でストレスの原因が整理できる効果もあります。
⑥ こころとからだをリラックスしましょう!
趣味、入浴、ストレッチなどの軽い運動など、1日に最低30分は自分のためだけの時間を作り、こころとからだをリラックスしましょう。
⑦ 日記を書いてみましょう!
日記を書くことによって客観的にストレスを振り返ることができるようになるだけでなく、良いことを探して日記に書くようにすると、物事を前向きにとらえられるようになります。
⑧ 1日1回は声を出して笑いましょう!
笑うことによってストレス関連ホルモン及び血糖値の低下や不眠の解消に繋がることが報告されています。面白いから笑うのはあたりまえで、面白いことを見つけて、そして面白くなくてもとりあえず笑ってみると意外に気分がすっきりします。
⑨ 人生の目標を持ちましょう!
人生の目標を持っていると、多少のストレスがあっても動じにくくなります。 例え小さい目標でもよいので、何らかの目標(希望)を持つようにしましょう。 アウシュビッツ収容所を経験したヴィクトール・フランクルは、希望とユーモアを持ち続けることが、過酷な環境を生き抜く上での重要なキーワードであったことを著書の中で述べています。
⑩ 健診を受けましょう!
ストレスによる身体の影響を早く発見するために、高血圧、脂質異常、糖尿病など、初期には症状がない生活習慣病を、定期的に健診を受診することによって管理しましょう。
まとめ
ストレスと、ホメオスタシスに重要な働きをしている自律神経、副腎ホルモンの関係性や、過剰なストレス状況を継続するとどのような症状に至ってしまうかまとめて見ました。
自分がどのようなストレス状況にあるかを理解していただき、まずい状況にあれば一人で悩まずに専門家へ相談をしてください。
また、普段から記載したようなストレスを溜め込みすぎない方法を試みたり、自分なりのストレス解消法を日常生活に取り入れ習慣化しておくことが大切です。
ちなみに、私のストレス解消法は、散歩の様に遅いジョギング、下手な横好きのゴルフ(&練習)、ストレッチ、日光浴(日向ぼっこ)、夏は木陰で森林浴、岩盤浴、スローライフを心がけること。仕事中は深呼吸とビンボウゆすり、仕事の日の短時間の昼寝などでしょうか。
新型コロナ流行が終わったら、旅行や友人との飲食も楽しみたいですね~。
院長 佐久間一穂
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