過敏性腸症候群(IBS)と小腸内異常増殖症候群(SIBO)の関連について
~症状は似ているけど、IBSは大腸、SIBOは小腸の疾患!?~
ストレスだけでなく、細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかったその回復後に、過敏性腸症候群(IBS)になりやすいことが知られていますが、アメリカでの研究では、過敏性腸症候群(IBS)の患者さんの78%に小腸内異常増殖症候群(SIBO)が合併していたとの報告がされました。その他の研究でも、IBSの患者さんの50%~85%がSIBOを合併していると報告されています。
IBSとSIBOは、非常に似た症状や病態が認められ、お互いオーバラップする部分も多いのではないかと考えてられています。
画像:過敏性腸症候群ガイドライン(日本消化器病学会)より引用
●過敏性腸症候群(IBS)とは?
IBSは、ストレスが一因で引き起こされるとされている腸の機能的な病気で、10人に1人に発症するとされる非常に有病率の高い疾患です。IBSの原因は、はっきりとはわかっていませんが、心身のストレスの継続によって不安緊張状態が重なり、自律神経やホルモンの乱れを介して、腸の蠕動運動が不安定な状態になり、さらに痛みを感じやすい知覚過敏の状態になることが知られています。これにより、便秘や下痢といった便通異常が生じて、腹痛を伴い生活に支障をきたすようになります。この状態が慢性的に繰り返されているのがIBSです。
一般的な治療は、ストレスをためず睡眠・休養を十分にとり、暴飲暴食を避けて規則的な食事を摂り、高脂肪食を控える、アルコールを控えるなど食習慣や生活習慣の改善を行います。また、カウンセリングなどで、日常にひそむ自覚しにくい心身のストレス要因の検討や、その解決なども治療の一貫として行なわれます。
これに併せてIBSを下痢型・便秘型・混合型・分類不能型と便の形を主な尺度で分類し、腹痛などの症状と合わせて内服治療を行なっていきます。
※当院では、IBSの原因として根本には腸内フローラの乱れと、それに伴う慢性炎症や
リーキーガット症候群の影響を念頭において治療しており、一般治療で効果がない症
状が重い患者さんへは、根本的な治療のためのバイオロジカル検査や個別的な治療
(保険外診療を含む)も行っています。
●小腸内異常増殖症候群(SIBO)とは?
SIBO(シーボ)は、Small Intestinal Bacterial Overgrowth syndrome の略称です。
まだ日本ではまだ聞き慣れない病名ですが、日本消化器病学会などでも研究報告が増えてきています。
通常、大腸には極めて多数の腸内細菌が存在していることが知られていますが、小腸内にはあまり多くの細菌は存在しないのが普通です。しかし、様々な要因から大腸に多いはずの細菌が、小腸内にも過剰に増殖してしまい、私たちが食事で摂った食べ物を発酵させて、小腸内に多量のガス(主に水素、メタンおよび硫化水素)を発生し、腹部膨満感や吸収不良、下痢、便秘といった症状を引き起こします。これを小腸内細菌増殖症(SIBOシーボ)といいます。
*SIBOの症状?
・お腹の膨満、げっぷ、逆流症状
・慢性的な便秘・下痢、または便秘と下痢を交互に繰り返す
・腹痛、お腹がゴロゴロする、おならが臭い
・栄養素の消化吸収不良
・気分の落ち込み、不眠症
・不安感、パニック発作
・記憶力が悪くなる、集中力が低下しボーっとする
・頭痛、関節痛 ・肥満、痩せ過ぎ
・喘息、湿疹、ニキビ ・ムズムズ脚症候群
など消化器症状以外にも、精神症状、身体痛、皮膚炎、代謝異常など様々な症状が認
められます。
*SIBOの原因とは?
SIBOの原因には様々な要因が絡み合っています。
・大腸の菌の過剰な増殖や細菌バランスの乱れ(酵母や寄生虫を含め)
・消化管胃や腸などの運動機能の低下
・免疫力、体力の低下
・胃酸や胆汁の分泌減少、胃酸を抑える薬を内服している
・抗生物質の乱用
・胃腸炎などで感染した菌による毒素が小腸の運動機能を障害する
・外科手術
・糖尿病、甲状腺機能低下などの内分泌疾患
★リーキーガット症候群(腸漏れ症候群leaky gut syndrome)
SIBOの原因として、リーキーガット症候群の合併が大きな問題になります。
リーキーガット症候群は、腸管の粘膜壁に炎症が起きて腸壁がボロボロになり、異物を体内に侵入させない防御機能を果たせなくなってしまい、隙間の多い腸壁から体内に異物(細菌や未消化物、毒素など)が漏れて入りやすくなっている状態のことです。 腸の粘膜は栄養素を吸収する出入り口でもありますが、腸の炎症によりこの出入り口も破壊されてしまい栄養の消化吸収力にも重大な影響がおこり致命的な結果をまねく原因にもなります。
*SIBOを悪化させる要因とは?
・カンジダ菌:悪性菌が増えるとカンジダ菌が増殖し、腸粘膜の炎症を起こします。
・リーキーガット症候群:カンジダ菌が、リーキーガット症候群を招き悪化させます。
・食物アレルギー:小麦に含有するグルテン、乳製品に含有するカゼインなどが腸炎を
招きます。
・砂糖、人工甘味料、防腐剤や増粘剤など食品添加物なども、悪性菌を増殖させる要因
になり腸内環境が乱れて腸粘膜炎症へと繋がります。
まとめ
ストレスは、腸内環境にダメージを与え過敏性腸症候群(IBS)の一番の原因を招きますが、トレスは外的な要因ばかりでなく、体内の慢性炎症などもストレスになりIBSの原因になります。小腸内異常増殖症候群(SIBO)の原因や症状を比較すると、とても一致していることが多いことがわかります。
IBSにより大腸内の腸内細菌フローラの乱れが慢性の炎症を起こし、腸の働きを乱し小腸の機能性障害の引き金をひいたあとに、様々な他の要因も起きやすい状態となりSIBOが合併する状況を作り出していることが伺われます。
IBSは、SIBOを招き、SIBOがあればIBSが根本にあると考えて検査や治療を行うことをお勧めします。
ミチワクリニック
院長 佐久間一穂
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