当院では、「自律神経失調」と同様に「副腎機能障害」がストレス障害や様々な病気の発症に重要な関係があることから、「副腎疲労症候群の治療」を行っています。
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まず副腎という臓器ですが、両側の腎臓の上部(下図参照)にある約3~5gほどの小さな臓器で、抗ストレス作用をもつコルチゾールやアドレナリンなどの副腎ホルモンの分泌をしています。副腎ホルモンは、自律神経と協調して、身体内部や外部からのストレス(刺激)に対応して、健康状態維持(ホメオスターシス)機能の役割を担う重要な役割りをしています。
ところが、心身に過剰なストレスがかかりすぎると、自律神経失調状態が起きるように、副腎も適切なホルモン分泌が出来なくなり副腎機能低下状態が生じます。その結果、全身の新陳代謝機能が低下し、エネルギー産生不足、血糖や血圧の異常、心臓などの様々な臓器や免疫機能の低下、脳神経機能の異常、甲状腺や性ホルモン分泌異常など様々な障害が生じます。慢性の副腎機能低下により、これらの様々な心身の不調や慢性の疲労状態が生じることを副腎疲労症候群と言います。
(※副腎ホルモンと自律神経の調節中枢は、共に大脳視床下部にあり、ホメオスターシス(健康状態維持)機能に両者が深い関わりがあることを示唆しています。)
●副腎疲労症候群が理解されにくい理由(わけ)
副腎疲労症候群は、心身のストレスの蓄積(負荷増大)により、自律神経失調と同様に誰にでも起きうる状態で、日常生活にさえ支障をきたしうるにも関わらず、現代の医療界にて病態の認識がされておらず、アジソン病の様な重篤な副腎機能低下がないと、それ以前の副腎機能の低下を通常の保険内検査では診断できない状況があり、副腎疲労の理解が一般に広まらない要因になっています。また、副腎疲労症候群の原因・発症が、様々な潜在的かつ複合的なストレス(下記)によることも理解されにくい要因と考えます。
しかし、副腎疲労症候群は、1900年代初期から非アジソン病副腎機能低下として認識され医学文献にも報告され続けており、2000年代になり欧米ではこの病態を再認識し積極的な治療が普及してきています。今後、日本でも医療の発展に伴い、この病態への理解が深まり、医療界や一般の方々への認識が広がることを願っています。
まずはストレス要因を問診や検査にて十分に検討します。
ストレスは、負荷の大きな仕事・学業(受験など)や人間関係などの心身のストレスばかりでなく、ライフスタイルの問題、思考や行動パターンの問題、アンバランスな栄養状態、腸内フローラ異常(リーキーガットの合併)や慢性気道感染や遅延型食物アレルギー、有害な重金属・化学合成物質の蓄積などによる慢性炎症、それに伴う細胞ダメージを含めて考慮する必要があります。それらの慢性被労の根本原因を診断し、以前の元気な生活を取り戻せるようにストレス要因により個別化した治療を行います。
■原因
副腎ホルモン(特にコルチゾール)はストレスがかかると分泌され、ストレスに対する抵抗力や回復力を増加させることから「ストレスホルモン」とよばれ、これにより私たちの身体は日々のストレスから守られています。
このストレスが一定以上の量や期間を超えてかかると、大量のコルチゾールを分泌することになり副腎が疲れてしまい、最終的にはコルチゾールを十分に分泌することができなくなり、ストレスが直接身体に障害を与えることになります。
これが副腎疲労症候群の原因です。
初期の副腎疲労症候群を見抜くことが重要ですが、残念ながら通常の病院で行われている一般検査では副腎機能がかなり低下し、アジソン病(副腎機能低下症)を発症するような状態になるまで、副腎疲労状態を判断する事ができないのが現状です。
■症状
●副腎ホルモンの分泌低下により生じる症状(副腎疲労症状)
(1)副腎ホルモンの制御システム
大脳脳視床下部・大脳下垂体・副腎系(HPA軸)で副腎ホルモンは制御されています。
視床下部が、体内内部要因や外部環境要因、心身のストレス要因に刺激されCRHにより、下垂体へ指令を送り、下垂体からACTHが分泌され、その刺激により各種副腎ホルモンが分泌されます。また、体内の副腎ホルモンが過剰になると、それが視床下部での抑制刺激となりCRHによる指令を調整します。この副腎ホルモン制御システムにより、健康維持機能(恒常性維持:ホメオスターシス)が機能しています。
(Medical Tribuneより引用)
≪自律神経、副腎ホルモンの調節系の類似性について≫
自律神経と副腎ホルモンは連携してホメオスタシス(生体恒常性)を維持しています。
両者をコントロールする中心は、大脳と脳幹の中間にある大脳基底核(大脳辺縁系)という所にあります。さらに詳しく説明すると、そこに視床下部という部位があり、自律神経と副腎ホルモンの両者とも、ここに中枢部位(コントロール室)があることからも、両者の関係の深さがわかります。
(2)主な副腎ホルモンの分泌やその作用について
副腎は、おおまかに副腎皮質と副腎髄質という部位からなり、それぞれ別なホルモンを分泌しています。
■副腎皮質ホルモン
1)コルチゾール:副腎の働きにとって中心的な役割りをするホルモンです。
コルチゾール分泌には、概日(サーカディアン)リズムがあり、一日を通して均一に分泌されるのではなく、午前8時頃に分泌量が最も高く、その後徐々に減少し、真夜中から午前4時頃にかけて最も分泌量が低くなる日内パターンがあります。
~関連する副腎疲労症状~
副腎機能が低下していると、朝のコルチゾール分泌が低下や日中や夜間のコルチゾール分泌の異常が生じ、朝早く起きれない、気だるく起きるのがつらい ・眠っても疲れがとれないなど、夕方頃に元気が出てくるなどの状態を認めます。
<作用>
~関連する副腎疲労症状~
副腎機能が低下しコルチゾール分泌が減少すると、グルコース産生力が低下し低血糖が起きやすくなります。また、タンパク質と脂質の代謝が低下します。その結果、ミトコンドリア機能は低下しエネルギーが不足となり疲労感が起きやすくなり、そして砂糖など甘い物やカフェインの欲求が高まります。
~関連する副腎疲労症状~
副腎機能低下によりコルチゾール分泌が低下すると、免疫力が低下し風邪を引きやすい、風邪や傷が治りにくい、アレルギー症状が悪化する、膠原病様の慢性炎症疾患になりやすい、悪玉菌による慢性腸炎や慢性上咽頭炎などが持続するなどの悪循環が生じます。
~関連する副腎疲労症状~
副腎機能低下によりコルチゾール分泌が低下すると、低血圧や脱水、低ナトリウム血症が生じ、体が重い、だるい ・立ちくらみがするなど、起立性低血圧や脱水症状が起き、塩辛い食べ物が無性に欲しくなります。
~関連する副腎疲労症状~
副腎機能低下によりコルチゾール分泌が低下すると、気力や意欲がわかない、気分の落ち込み、思考力が働かずボーとする、記憶があやふや、不眠や過眠などの症状がおきます。うつ状態や気分変調が起きやすく、睡眠障害も伴い精神疲労が蓄積します。コーヒーやチョコレートなどを欲し、仕事などするのにカフェインを必要とします。
2)性ホルモン
副腎皮質では、女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロン、男性ホルモンのテストステロンが合成されています。
男性の場合は、エストロゲンやプロゲステロンは副腎がメインに分泌されており、テストステロンは精巣での分泌がメインであり、副腎は補助的な分泌を行っています。
女性の場合は、テストストロンは副腎でメインに分泌されており、閉経前はエストロゲンやプロゲステロンは卵巣での分泌の補助的な役割りを果たしています。閉経後は、副腎での女性ホルモン分泌がメインになります。
~関連する副腎疲労症状~
副腎機能低下により性ホルモンの分泌が低下すると、月経前症候群や更年期障害の症状が強くでる場合が少なからず認められ、副腎での性ホルモンの分泌の重要性が指摘されています。
性ホルモンの前駆物質であるDHEAは、抗酸化作用や抗老化作用をもつホルモンとして注目されていますが、副腎機能が低下すると副腎はコルチゾール合成を優先させ、DHEAの合成が低下してしまい、性ホルモンの合成も減ってしまいます。DHEAや性ホルモンの減少は、活力や性欲の低下につながり、中高年者では老化を早めることになります。
3)アルドステロン:体内の重要なミネラルと水分量の調整の中心的役割りをしています。
コルチゾールと同様、アルドステロンの分泌量は日内パターンがあり、午前8時頃に分泌量が最も高くなり、その後徐々に減少し、真夜中から午前4時頃にかけて最も分泌量が低くなります。
<作用>
~関連する副腎疲労症状~
副腎機能低下によりアルドステロンの分泌が低下すると、血液中のナトリウムが腎臓を経て尿中に排泄されます。ナトリウムが排泄される際に、同時に水分も排泄されます。
血液ナトリウム濃度と水分量が低下しすぎないように、間質液からこれらが血液中に移動し、それでもナトリウムや水分が不足する場合には、細胞内から間質液にこれらが移動します。さらに、副腎機能低下によりアルドステロンの分泌減少が持続すると、細胞内のナトリウム、カリウムが減少し、そのバランスも崩れ、また細胞内脱水も生じるため全身の細胞機能が低下します。また、血管内のナトリウム不足、脱水も生じることにより低血圧を招くことになります。立ちあがったときに、眩暈や目の前が真っ白になるなど起立性低血圧症状や、疲れやすさ、倦怠感、塩分の強い食べ物を欲する、のどの乾きやすいなどの症状が現れます。
■副腎髄質ホルモン
~関連する副腎疲労症状~
副腎機能が低下している際には、前述したようにコルチゾール不足で血糖値が不安定になり低血糖を起こしやすくなります。その際にアドレナリンとノルアドレナリンが分泌され、急速に血糖値を上昇させる働きをしますが、同時に血圧や脈拍を上昇させ、呼吸数の増加、体温上昇などの反応も起きます。これらの反応が強すぎると、動悸、息切れ、発汗、不安緊張状態などの症状として現れ、症状が激しいとパニック発作と勘違いされます。
●抗ストレスホルモン
(コルチゾール)の分泌量
抗ストレスホルモン(コルチゾール)は、朝8時頃に最も多く分泌され、夕方以降は減少します。
これをホルモンの日内変動と言います。
ストレスで副腎が疲れていて、グラフ(黄色)の様にホルモンの分泌が悪くなると、朝起きれなくなったり、起床時から疲れていたりという副腎疲労症候群の症状が見られるようになります。
下記のようなバイオロジカル検査で根本的な原因を調べ、以下に示すような根本的な治療を行うことで、慢性的な症状の改善をはかります。
■検査
●症状や検査データから、必要な治療を選択し、
優先順位を決定します。
食事療法や、生活習慣の見直し、心身のリラクゼーションなどが基本的に重要ですが、病的な状態では不足しているビタミン、ミネラル、酵素、ハーブ、抗酸化物質、解毒栄養成分、プロバイオ(腸内良性菌)などを十分に補充することが必要になります。
■基本的な治療
心と身体の不調、症状の改善 / 自律神経検査、在宅睡眠検査